14 カーン◆saQT
午後2時50分。試合開始10分前から異変は起きていた。既にリバプール側のテラスは満杯となっていたにも関わらず、まだ外のターンスタイルの前には長い列が出来ていた。2時55分、選手入場。一際大きな歓声が上がり、早く中に入ろうとする人で入り口は混乱を極める。
だが、リバプールのサポーターに割り当てられたレッピング・レーンでは、このとき雪崩が起こり、ピッチとスタンドを仕切るフェンスに押し付けられる人が続出する。
前にも横にも逃げ場はなく、あちこちから悲鳴が上がる。
それでも、スタンド前方で何が起きているか分からない人たちは、狭いテラスへ次々に押し入って来る。
元々、イングランドではピッチを取り囲むフェンスを備えるスタジアムは余り存在しなかった。ゴール裏にフェンスが初めて設置されたのは、1963年。チェルシーのホーム、スタンフォード・ブリッジにおいて。原因はピッチへの乱入者が相次いだため。次第にフーリガンによる暴動が頻発するようになると、ピッチ全面を取り囲むフェンスを必要とする声も多くなり、導入するクラブも増えていった。1985年には、ミルウォールのサポーターがピッチ上で警官隊を病院送りにするほどの大乱闘を起こし、フェンスの必要性を疑う者は少数派であった。
ところが、このフェンスがフーリガニズムとは何の関係もない人たちの命を奪っていった。人波に押しつぶされ、呼吸が困難となる。倒れた人はそのまま下敷きとなり、踏み潰されて行く。キックオフの歓声に加え、試合開始直後にクロスバーを直撃したシーンに大きなどよめきが起きると、中に入れずにいた人がしびれを切らしてしまい、無理に突き進んだ。
もはや、声も出せなくなった数多くの人々がフェンスに顔を押し付けながら、ぐったりとしている有様。この事態に気付いたスチュワード(係員)が、フェンスの扉を開けようと早くから奮闘していたが、どうにも埒(らち)が開かない。しかも、一部の扉には鍵がかかっていた。苦しむ人々の声を聞き、警官も救出に加わるものの、キックオフ間際の時間帯であったこともあり、運営サイドに緊急事態がすぐに伝わらない。
だが、リバプールのサポーターに割り当てられたレッピング・レーンでは、このとき雪崩が起こり、ピッチとスタンドを仕切るフェンスに押し付けられる人が続出する。
前にも横にも逃げ場はなく、あちこちから悲鳴が上がる。
それでも、スタンド前方で何が起きているか分からない人たちは、狭いテラスへ次々に押し入って来る。
元々、イングランドではピッチを取り囲むフェンスを備えるスタジアムは余り存在しなかった。ゴール裏にフェンスが初めて設置されたのは、1963年。チェルシーのホーム、スタンフォード・ブリッジにおいて。原因はピッチへの乱入者が相次いだため。次第にフーリガンによる暴動が頻発するようになると、ピッチ全面を取り囲むフェンスを必要とする声も多くなり、導入するクラブも増えていった。1985年には、ミルウォールのサポーターがピッチ上で警官隊を病院送りにするほどの大乱闘を起こし、フェンスの必要性を疑う者は少数派であった。
ところが、このフェンスがフーリガニズムとは何の関係もない人たちの命を奪っていった。人波に押しつぶされ、呼吸が困難となる。倒れた人はそのまま下敷きとなり、踏み潰されて行く。キックオフの歓声に加え、試合開始直後にクロスバーを直撃したシーンに大きなどよめきが起きると、中に入れずにいた人がしびれを切らしてしまい、無理に突き進んだ。
もはや、声も出せなくなった数多くの人々がフェンスに顔を押し付けながら、ぐったりとしている有様。この事態に気付いたスチュワード(係員)が、フェンスの扉を開けようと早くから奮闘していたが、どうにも埒(らち)が開かない。しかも、一部の扉には鍵がかかっていた。苦しむ人々の声を聞き、警官も救出に加わるものの、キックオフ間際の時間帯であったこともあり、運営サイドに緊急事態がすぐに伝わらない。
(PC)