16 地獄からの手紙
俺は持病を2系統持ち、会社の有給を取って3つの病院をはしごする。常備薬がなければ、4日持たないと言われている。

主治医によると、学術的には明らかでないとされているが、俺の持病2系統のうち、1系統の主因はタバコに由るものということでまず間違いないという。

母親による妊娠前の喫煙。妊娠中の喫煙。妊娠後の喫煙。一酸化中毒、ニコチン毒、タール毒。これ等の悪影響は母体よりも寧ろ胎児や幼児に影響するところが大きいらしい。俺の家の両親は喫煙者だが、健康にさしたる悪影響は今のところ見られない。

男女同権の現代社会において、女性だけがタバコを吸う権利を剥奪されるのは、筋が通らない話だ。俺はタバコが無くなって欲しいと思うが、
タバコという、俺にとっては悪魔の趣向品がこの世から消えて無くなったとしても、俺の病気が治ることはないだろう。

俺は、タバコという趣向品を憎む。
俺は、喫煙という行為そのものを憎む。
俺は、タバコを造る行為を憎む。
俺は、タバコを運ぶ行為を憎む。
俺は、タバコを販売する行為を憎む。

朝起きて見る、歪んだ世界や、階段を登った後に霞んで見える世界を、喫煙を肯定する者や喫煙者の全てに見せてやりたい。