薔薇の頬

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sakutaro
ハンガリアン・ダンス
私はプラハで歓楽的な日々を過ごし、日本に帰って来た。地球で一番、「その日」が来るのは東京では無くシドニーであるのだが、「昨日」がもう一度、日本で楽しめる。東欧娘の瞳は碧く、蜜月の日々が続
く。飛行機という危険な密室が怖く無い人々は奴隷商人のように儲ける。アルチュール・ランボーの体験は学ばねばならぬ。
しかし、それよりも、甘美な君のキスが、そういう勉強の時間を与え無い。富の最大な者は富を奪われ、学者は牢獄へ。飛んだ吉田松陰の首は日本を帝国主義の国とした。今こそ鎖国がふさわしいのだが、先端的な日本はもう、ヴァーチャルな国の一地域でしか無い。ああ、気付くのが遅かったね。日付的に東京は世界の先兵。もう、ノアの箱舟に乗っても仕方が無いねえ。
ヒロシマ、ナガサキ、トーキョー、オオサカの焼け野原を見る事は時間的に無理であったが、神戸の大地震の後の焼野が原を私は見た。多少の役には立つだろうと思う。日付変更線上の危険な仮面舞踏会が始まった以上はね。
アパートの時計
私は、午後9時きっかりに彼女の部屋を訪ねるのを日常とした。

アパートと言っても昭和初期に建築されたものらしく木材なども良いものが使われて
居り、煉瓦を基調とした洒落れたものであった。玄関はフロントのようになっていて
アパートの所有者である上品な老婦人が
いつも、眼鏡をはずして挨拶してくれるのである。ロシア文学が趣味であるらしく
キリル文字の本を読んでいた。
私は、ロシア語は読め無いけれど、ツルゲーネフやチェホフ、プーシキン、などの人名を解読することくらいは出来た。

玄関の上に時代ものの時計が架かっており
たいてい、午前0時を指していた。
彼女の部屋の時計も、0時である。

ここで年を越した時なぞ、一斉に、部屋
の住人が喚声をあげるので、わたしの腕時計なぞは困ってしまうのであった。

普段は、3時間ほど居て、別れのキスをする。従って、私は最終の電車に乗る事が
出来た。駅の時計は午前0時10分なのである。わたくしの腕時計も、、

日常的に、このアパートの時間は3時間、先取されているのであった。
いつも不思議な幻覚を感じた。彼女はアパートの外に出る事が無いらしく、私の土産で食べていた。その頃、外国為替に熟知していたらニューヨークの相場で大儲け出来たのであったが。
たった3時間であっても時間を先取りする
事は、その後の私の人生に「罪と罰」を与えた。老婦人の読んでいた本の中には、
ドストエフスキーは無かったように思うのだが。私の書棚には有った。

罪を自覚した者だけが罰を受ける。あのアパートには罪の意識は無く今も存在しているのを先日、確認した。
令夫人
モーツアルトのことを、或る人が秋の砂浜で子供が無邪気に小石を投げているような感じ、と言った。メロディアス

それを拾って、極めて構造的に(それは、今でも、微動だにしない)
ベートーベンは建築した。コンポーザー

ドビュシーは、いつでも酔っ払ったインプレッション、、
ワグナーはトランペッター 、マーラーはフラッター、、

私の愛人は、ブラームス。苦くて、渋くて、甘美なアーキテクト。

あとの連中?、、そうね、、2、3度は寝たかな、、ドン・ジュアン?
懐かきテロリスト
午後の恋人たちは自然に私を遠ざける
窓は自然に閉じられた

何かが始まり、何かが終わる
何もかも昔のままに

柳川の土蔵の陰に
前橋の空の上に

私には、もう描く力は無いけれど
黄色の爆弾をひとつ置く事は出来る
ステレインジ・フルーツ
そうさ、あのレディ・ディの歌ったように
俺たちは怖いのさ。だから麻薬にも溺れるし
酒の強いのを浴びるほど飲む。
「深い河」ってやつが、どうもホワイトにゃ
わからんらしい。その繰り返しで朝日館にも行けないよ。

子供達は多い。貧乏だからね。奴らはすばしっこい良い子たちだ。
スポーツ選手っての?そういうものには、道は有る。
何とか、金儲けをして欲しいものだ。星条旗は嫌いだがね。

俺の甥っ子は、ホワイトに気に入られて法律家になったが
政府とやらに雇われて、すっかり駄目になった。
俺たちより弱い奴らが世界中に居るらしいね。
「奇妙な果実」を、もう、つくら無いでくれ。ああ、爺さんから、
聞いた事があるな。綿畑で一日中、働いて、粗末な教会で、
賛美歌を歌っていたそうだ。その方が俺には似合うな。。

そうだ、一曲、歌おうか、?もっと飲みなよ、ジャパニーズ・・?

                     
詩人の運命
(コート・ダジュール)

はね橋は上がる、 南仏の港町
みじろぎもせずに見ていたよ
漁師のブイヤベース、盲目の落人よ!

運河は、光りを放ち、アムステルダムを思わせる
秋の水は、どこまでも澄むというのにさ!
虹色の太鼓橋が鳴り、キラキラと砕けて落ちた

ガリラヤの漁師たちは、それぞれ、血を流して
湖面は塩っぽく輝いていた、いつまでも広場に

憂鬱は激しい発作、 耳を切り落したい騒音
奴隷海岸のあたりの詩人のように、執拗にさ!

ゴシックは、また甦る、ハプスブルグ或は戦争?
あの湿った寒い土地とも、お別れだ
妹よ、さあ、おまえの肖像画を描こうじゃないか!

トウオネラの白鳥よ、冷たい横顔のエンサガ
原始的な宗教は滅びない、多神教の女神だよ
妹よ、ケープタウンまで一緒に !
硝子館
ステンド硝子に朝の5時頃の太陽が刺す
数える気も起こらない色彩の数々、、
中世の基督教会を改造したホテルのような

いつもの君の寝顔がピエロに見える
自分のアパートに泊まったはずなのだが
見慣れた木立も見えて、何処なのだろう?

君を揺り動かして目覚めさせるのは可哀想
何の夢を見ているのか、気持ち良さそうに

私の夢は消えて、透明な光は戻ら無いだろう。
凍蝶の夢
凍て蝶の、韃靼海峡、落ちる夢

遊女の夢の儚さに、野の百合も
また、はらはらと、聖書の栞に
なりたやな、仏蘭西見たや

穢土、見たや、やがて眠りに、
落ちまする、ええ、落ちまする。

sakutaro