18 アイ◆6CQrWR
12さん、13さん
どうか嘆かないでくださいね。私は大丈夫ですから。
生きている間は正気を保っております故に、私には死ぬ間際等はなく、ふとした瞬間にあの世で目が醒めるのでしょうから。
恐らくアッシュは私を待っているでしょう、私が迎えに来るのを今か今かと指折り待ち続けていることでしょう……。

あの時、アッシュが彼女の姉に殺された時もそうだったのかもしれません。
満身創痍で何とか自分の姉をはね除け、相討ちにまで追い込んだ時、地にその傷付いた体を力なく横たえ、自分の体から流れ出るドス黒い鮮血を眺め、薄れゆく意識の中で今までの走馬灯を、私のことを思い出してくれていたに違いありません。
そして、私の想い出に包まれながら、アッシュは意識を失い、その身体は生命を失い、そして命を喪ったのです。

ここまで書いていて私はなんて情けない男なんだと痛感しました。
彼女の死ぬ間際に側に居ることも、駆け付けてやることも出来なかったのですから。

私はというと、しがない物書きで、ゲームばかりしていて、たまにする事と言えば三味線を弾くぐらいの、つまらない男です。
けれどもその日々はとても彩られた毎日でした。鮮やかな赤に、クリムゾン色に。
それはアッシュが居たからです。改めて痛感します。
私の書く詩が好きだと言ってくれたこと、私とゲームをするのは楽しいと言ってくれたこと、三味線を説明するのにジャパニーズギターと言ったら三味線ぐらいは知っていると笑われたこと……
[ボクはツマンナイ人と一緒に居る趣味はナイからもうその言葉は言わナイでくれる?]と諭してくれたこと。
ええ、彼女はそんなつまらない私をたくさん愛してくれました…。

彼女が居なくなって私の心にはとても大きな風穴が空けられて、それは多分、アッシュが私の心を掴んだままあの世に行ってしまったからなんですね。
つまり今の私は、心ない人間と言うものになってしまいました。ハートレスですね。
だからあの世へ行って、アッシュに私の風穴が空いた胸に心を埋め込んでもらいます。そして私はつまらない人間ではないということをもう一度言ってくださいね!

アッシュは灰色ですネズミ色だとか薄汚れた色だとか世間は言いますが私にはアッシュを失ってから世界が灰色になってしまいましたからアッシュは私にとっての色彩だったのです!驚きの事実ですね。