草の笛
過去ログ16
2010/8/21 14:07
▼sakutaroシズカ・アラカワの為にイナバウアーは魔笛なささやき
アイスドールは今夜も踊る
今宵も寝てはなりませぬ。
愛するパバロッティ
ああ、プッチーニ。
2010/8/21(土)14:06
▼sakutaro秋冷秋の午後、隠れていた少女はクスッと笑う
セピア色に裏切られた午後の翳りの中
不可視な瞳を持つ少女よ、私を刺せるのは君だけだ
この鮮やかな世界に疲れ果てて眠る私
反転する繁華街の灯りの中で
積み重ねてきたものも無く最後の慰謝として
今度は君に刺されたい
あなたに酷似した少女に
刺繍にふち取りされた綺麗な私の死体
2010/8/21(土)13:59
▼sakutaro眼で歌う或る歌手は声を喪った
それから歳月は流れ、春が来た
小鳥よ、と彼女は呼びかけた
喪われた声帯は戻って来ない
しかし、小鳥は振り向いた
うつくしい声で鳴いた
彼女の聴覚まで喪っていなかった
眼でかろやかに歌いはじめた
家族には聞こえ無かったが
その声は、はるか遠くの私に届いた
懐かしい声が聞こえる。もう、何時だろう
数時間前の歌が私に今、届いた
2010/8/21(土)13:56
▼sakutaro非在の司祭いつまでたっても司祭の現れぬ間にミサは淡々と進行し、司祭など不要のように思われた。
信徒たちに予測され、その為にリハーサルなど有ったはずは無いのだ。
それは充分に予測不可能で、偶然性の高いものであったから。
信徒たちには、その後の予定が有ったし、又、その信仰に揺るぎが無かったから。
ミサの作法は朧気に覚えており、また、基督の言葉を充知していたから。
薔薇窓はキラキラと意味深い光りを投げ
かけ、木製のオルガンは、かつて無いほど荘厳に響いた。
(それは外部に洩れぬように配慮されていた。)
ミサはほぼ完璧に終わり、今度は司祭の
意味について討論がなされた。
弥五郎は言った。「もう、赤毛の司祭などいらねえと思うだ」、
「おらたちでも充分だ」と十兵衛も続けた。
長老の信徒たちも「もう、紅毛人にだまされねえぞ」と口々に言うのであった。
かくして、以後は、日本人たちだけでミサは行われ続けた。
が、或る青年は当初から気付いていたのだが、司祭の、意味は不明ながらラテン語の
呪いのような言葉の響き、紅潮した頬、、碧い眼、鋤や鍬など握った事の無かろうと
思われる白き手の不在を。
青年は棄教し、消息を断った。
風の噂では、禁制物の貿易で巨万の富を得ているとも、
罪を得て、小伝馬町の牢屋で生息しているとも言われた。
村人たちは、その事に関心を示さず、ミサはおもむろに
土着的な宗教と加して行った。
明治の初めにプチジャン神父に発見せられるまで、それは続いた。
プチジャンは、そういう青年の存在した事を知る由も無かった。
その青年も、また、非在の人であった、
と言えるのかも知れ無い。
見たことも無い色彩の蝶々のように。
聞いた事も無い鈴の音のように。
2010/8/21(土)13:39